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2016年03月20日

賀名生梅林と五新(未成)線跡

2016年03月20日 五条駅→国道168号→[五新(未成)線跡]→賀名生皇居跡→[賀名生梅林]→[五新(未成)線跡]→西吉野町城戸→一の木ダム→五条駅

 3月は梅の時期。大きな梅林は交通の便が良くない所が多いです。昨年は月ヶ瀬に行きましたから、今年も梅林へ行くことにしました。選んだ行き先は[賀名生梅林]。奈良の南ですが、山間部だからかここも見頃は遅目です。

 賀名生梅林の最寄り駅はJRの五条。ここから国道で谷間をしばらく登ったあたり。国道168号は十津川から新宮へ向かう道です。距離はあまり長く無いけれど、山中のうねうね登り道でトラックやバスも通ります。なるべくなら通りたく無い。裏道探していると、地形図に「バス専用道路」というのが書かれていました。ここは国鉄五新線の代替バスが走っていた道。そのバスもしばらく前に廃止になって廃道になっています。このため道路地図には載っていないのですが、一部はまだ地元の集落道としても使用(黙認?)されているようです。通れるならばおもしろそうです。
 五新線は五条から紀伊半島を縦断して新宮を目指す路線でした。しかし延々山中の区間越えるルートは技術的にも経済的にもあきらかに無謀。ルートの北側の1/5ほどの区間の部分開業を目指して建設が進められたのですが、それも完成できずに計画中止になりました。予定区間の半分ほどがバス道として使用されましたが、それも平行する国道経由となり、未成線は廃道になりました。

 3月中頃の訪問を予定したのですが、諸事情で1週遅れました。おそらく完全に見ごろは過ぎているでしょうが、それでも上の方はまだ見れるのではないかと、お天気の具合を見ながらお出かけ。

[五条駅]

 ここはJR和歌山線の駅。単線で列車の本数が少ないです。JR関西線の王寺からまわる他に南海高野線で橋本乗り継ぎという手もあり、所要時間は大差無いです。時刻の都合を見て、往路は橋本まわりの経路を取りました。
 駅前には観光案内所があり、ここで賀名生梅林の案内図を入手しました。ここにはレンタイサクルがありました。街並や皇居跡あたりまでの観光ならかなり有効なのではないかと思いました。

[道の分岐]

 駅前から少し下って国道24号へ。その角にあるコンビニでお茶と昼食を確保。国道を少し進むと青看板がありました。未成線の遺構はこの少し先にあるのですが、今回は梅林が目当て。左に折れて橋を渡ります。

[未成高架橋]

 道なりに走って街を抜けたあたり。国道を跨ぐ高架橋の橋台です。代替バスはここまで国道を走って来て、この左側から専用道路に入っていました。

[専用道入り口の封鎖]

 バス専用道だった頃の立て看板とゲートが残っていました。廃止後に付けられたらしい車止めがあり、その手前にはAバリも置かれています。車止めは取り外し式で、路面にはタイヤ跡がありました。
 とりあえず自転車は置いて、先の様子を見に行きました。

[未成高架のあと]

 入り口から坂道を登って市内方向を見たところです。切れ切れに土盛りが見えます。反対側は普通に舗装道路が続いていました。

[単線の路盤]

 路面は普通に狭い集落道か農道といった程度ですが、跨線橋の形とか微妙なカーブとカントの具合とか、路面以外は完全にローカル線の雰囲気。高速鉄道にはきついカーブでも道路と比べるとゆるゆるです。
 五新線はもともとは貨物輸送も考えた路線です。勾配はあまりきつくないです。お出かけ自転車はアウターの3速で普通に走れます。普通のお買い物自転車でもそれほど苦しくない程度。サイクリング道としてちょうど良いのではないかしら。

[交差点?踏切?]

 地平を行くローカル鉄道線らしく、地域の道と平面交差しています。カーブミラーとその下のトラ塗りの柵の取り合わせが妙です。こういうのがいくつもあります。こういう所から出入りしているのてしょうか、地元民の車が通っています。

[生子トンネル ]

 そのまま生子の集落を過ぎると、トンネルがあります。ここは生子(おぶす)トンネル(832m)。ここを抜けられるとすっごく楽なのですが、残念ながらしっかり封鎖されています。長さは長いけれど直線で出口も見えてます。自動車のすれ違いは困難でしょうけど、2輪車には解放しておいてほしいです。
 仕方ないので、右側の道を登って上の国道へ迂回。

[国道から]

 国道は河岸の凸部を高巻きして越えています。車はスピード出して通りますが、道幅はあまり広くなくてけっこうきつい登り坂。一応歩道はありますが、狭くてデコボコ。気分的にもしんどい。生子トンネルが通れないのが辛いです。
 くるっと突出部を回って鉄道路盤が見えるところまで来ました。国道は山腹をへつり登って、この区間でかなり高度を稼ぎます。下の線路も登り続けているはずですが、かなり高度差がついています。国道からこの下の集落へ下りる道があります。稼いだ高度はちょっともったいないけど、喧噪な国道はイヤなので下へ降ります。

[谷を跨ぐ橋]

 のどかな谷間の道。ここはバスが走った道ですが、踏切っぽい物があるので鉄道廃線跡っぽく見えます。上を大きく立派な農免道路の橋が跨いでいます。国道はあの橋の高さです。

[親房トンネル]

 集落を抜けて橋を渡って。路盤はひたすら登り続けています。うねうねとした谷間を行く鉄道線路らしいパターンで、山の端は短いトンネルで抜いて橋で対岸へ渡るくりかえしです。親房(ちかふさ)トンネルは曲がっていますが短い(139m)ので出口の明かりが見えます。

[トンネルの先に ]

 親房トンネルを抜ければ賀名生(あのう)地区です。すぐ先には尾名瀬トンネル(35m)が見えています。鉄道になっていれば、ここが梅林の最寄り駅になっていたところ。一旦ここで路盤を離れます。

[皇居?]

 バス停跡の近くの道から集落へ入り、橋を渡ってすぐに見える古民家風の建物。賀名生(穴生)は南北朝時代の一時期、南朝の行宮が置かれていたところです。このあたり、明日香・吉野から熊野へ抜ける道筋ですが、どう考えても行政府を置けるような所ではありません。避難所程度でしょう。この建物は元の敷地と伝わる所に建っているのですが、当時の建物ではありません。 

[梅林の入り口]

 皇居の前から資料館を通って国道へ出ました。梅林の入り口のあたりには売店がいくつかありました。見頃はすぎているのですが、けっこう観光客がいます。案内図には梅林をひとまわりするコースが示されています。これに従って観梅することにしました。一周が約4kmとか。

[梅の山へ]

 ここは近畿圏では有数の規模。梅林は谷間の斜面に拡がっています。最上部まで標高差で200mあまり。ミニ登山です。支谷から上りかけ、梅林の中の斜面を斜めにへつり登るような道筋でした。傾斜はけっこうありますが、林道や登山道に比べると緩いです。インナーの1〜2段で登れる程度ですが、無理無理登っても肝心の梅と景色を見なけりゃ意味が無いです。花のあるあたりは降りて押しながら、ところどころ止まってあたりを眺めながらのたのたと。

[斜面の梅の樹]

 下の方はもうほとんど散っていましたが、上の方でちょっと陽影っぽいあたりはまだまだけっこう咲いていました。この写真のあたりがだいたい最上部です。
 観光地らしく梅園内の道は舗装されていました。陥没や崩落はありませんが、ところどころ落ち葉や小石もあります。そして徒歩の通行人もいます。景色に見とれていると危ないです。とにかく最徐行で下りました。

[築堤 ]

 ゆっくり梅林をひとまわりして、第1目標はクリア。ふたたび五新線の路盤へ戻りました。ほとんど車の来ない道をゆったり走るのは気持ち良いです。このまま行けるだけ先へ進みます。アンズや桃でしょうか、この谷間のあたりには白や薄桃色の花を咲かせた樹があちこちに見えます。春の田園らしい風景です。
 このあたりは向加名生(むかいあのう)。路盤は集落の脇を築堤で進みます。土手にはピンクの花をたくさん咲かせた樹が並んでいました。花姿は小さな桜。ヒガンザクラの仲間でしょうか。このあたり、もし列車が走っていたら撮影の名所になったことでしょう。

[お花見]

 梅林の観光を含めて、ここまでの所要時間は2時間半ほど。花を眺めながら青空の下で昼食。

[長い橋]

 築堤の道はこの先で川と国道を一気に跨いでトンネルへ続きます。橋は「第七丹生川橋梁」で、トンネルは大日川トンネル(530m)。残念ながら橋の手前で封鎖されています。仕方ないので、ここで下の集落道に降りて国道へ。国道は川に沿ってぐるっと迂回しています。

[衣笠のバス停]

 大日川トンネルに相当する区間を過ぎると、国道は次の山襞を長いトンネルで抜いています。そしてこの国道トンネルに対応する道(旧道)があります。長い現国道のトンネルは通りたく無いですから、途中でこの脇道へ逸れます。
 この道から大日川トンネルを出た路盤は近いです。道の横の階段を上るとローカル線の駅っぽい物がありました。この区間は通る車も無いのでしょうか、路面の舗装の上には落ち葉などが積もっていました。このすぐ先には次の衣笠トンネルがあります。

[衣笠トンネル ]

 衣笠トンネルは微妙に曲がっていますが、長さ240mとあまり長く無いです。しかしここも封鎖されています。このトンネルの状態の悪化をきっかけに代替バスが廃止されたといういわく付きのトンネルです。洞内が鋼材で補強されていて、封鎖されていても当然という感じです。
 さきほどの階段を降りて下の道へ。この道(旧道)は川に沿ってぐるっとまわって進みます。 

[黒渕トンネル]

 山襞をまわって少し先。発電所の方から川を渡って対岸の黒渕の集落へ下りる道があります。五新線の路盤はこの集落を通っています。
 さきほどの衣笠トンネルとの間にはもうひとつ、黒渕トンネル(74m)があります。行き先の無い道ですが、路盤を少し戻って見るとちゃんと開通していました。
 あとはこのまま路盤を進みます。そろそろ谷も行き詰まって来た感じで、路盤の勾配が少し増したようです。貨物輸送にはぎりぎりぐらいの勾配で、昔のディーゼルカーではあまりスピードが出せなかったでしょう。

[南側の通行止め]

 そのまま谷間を登り続けると車止めがありました。どうやらここが専用道の城戸側の末端。写真は振り返って撮っています。
 このすぐ先にバスの待合所のような建物などがあり、そのあたり、観光案内の看板もありましたが、すっかり寂しい雰囲気です。

[使われなかった路盤]

 五新線の建設はこの先へも伸びていました。路盤の先は高架橋になり、そのままトンネルに続いています。しかしこの先の区間はバス道として利用されることもなく封鎖されています。

[城戸]

 五新線の部分開業の行き先は大塔村阪本でしたが、鉄道代替バスはここが終点でした。どんな所か気になっていたのですが、大きな集落がある訳でもなく、ただ谷間の道の分岐点という感じでした。
 ここからふたたび「向加名生」まで戻ります。国道を戻るという選択肢もあるのですが、やはり喧噪は嫌。もう一度未成線の路盤を辿って戻りました。

[梅林を遠望する]

 往路をそのまま戻っても良いのですが、それではあまりに近すぎ。もうひと周りします。地形図で周辺の道を探していると、向加名生から梅林と向かい合う東側の斜面を登ると、ちょうど山襞のあたりから梅林のある枝谷が見えそうでした。そのままひと山越して隣の谷を下って、うねうね走ると、小さなダム湖を経て五条駅へ戻れます。
 という事で、ふたたび標高差200mほどの山登り。こちらは農道か林道といった道で、綺麗に舗装されていますが傾斜はかなりきつかったです。無理せず半分以上押しで登りました。ちょっと距離は遠いですが、梅林のあたりが広く見えます。花いっぱいの時期にはきっと綺麗な景色でしょう。 

[道ばたの梅]

 このあたり、山腹の斜面はずいぶん拓かれています。柿の木らしいのが多いですが、梅もけっこう植わっています。昔は梅林だったのでしょうか、谷間の雑木に混じって花を咲かせる古木も見られます。

[現代の農道トンネル]

 この道は農免道路で、往路に谷間の上を跨いでいた橋の続き。谷間は高い橋で越えて山はトンネルで抜く。現代の土木ならではの力業です。道幅も広くてトンネルの断面も大きいです。遠慮して走る自転車を軽トラが猛スピードで追い抜いて行きました。

[一の木ダム]

 農免道路から県道へ進むのもアリですが、それでは面白くなさそう。集落道を伝ってダム湖の周回道路へ出ました。

[吉野川の谷間]

 ダムから下る道はすぐに緩やかになりました。吉野川へ続く谷間の傾斜地に出ると景気は一変。のどかな田園になりました。このままゆるゆると下ってゆけば五条の街並みへ続きます。

 古い街並みの様子はなかなか良い感じでした。次は駅前のレンタイサクルでのたのた街巡りするのも良さそうです。生子トンネルが通れるなら、梅林(の下)まで行くのも簡単でしょう。自転車がトンネル内を通れるようにして、向加名生あたりまでの五新線跡をサイクリング道として使えるようにすれば、観光に役立つと思います。

 五条の駅で自転車を袋詰め。王寺方面への電車には間に合わなかったので、帰路も橋本経由になりました。お土産は、梅林の下で買ったミョウガの梅酢漬け。柿の葉寿司は今晩の夕食です。 


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