2016年05月25日
【祝 名松線復旧】鉄と自転車で松阪から名張へ
2016年05月20日 松阪駅→[JR名松線]→伊勢奥津→伊勢本街道→岩坂峠→敷津→比奈知ダム→名張駅
名松線は三重県内を走るローカル線。その名は伊勢路の松阪と伊賀の名張を結ぶ計画から来ているのですが、建設されたのは途中の「伊勢奥津」まで。伊勢奥津と名張の間はバスが結んでいましたが、それも減便されて今は1本だけらしいです。
奈良から伊勢へ向かうルートとして歴史があるのは「伊勢本街道」。桜井から宇陀・曽爾・御杖と山中を抜けて奥津から多気へ至る道筋で、現国道369号から続く368号がほぼこのコースです。集落伝いであまり遠回りでないかわり、山襞を越える峠が連続します。ここに鉄道を通すのは現実的ではありません。途中の奥津付近のほかは街道とは異なるルートで鉄道が計画されました。松阪から川沿いに登って峠を越えて、川沿いに名張へ至り、榛原から桜井へ至る。山地を避けたかわりにずいぶん迂回するルートになりました。その前半部分に相当するのが名松線で、後半部分が近鉄大阪線になりました。近鉄はそのまま東進して青山峠を越えて松阪へ直行するルートを採り、結果として名松線の本来の意義が失われました。
狭い谷間をうねうね辿る線路は何度も水害で不通になっています。2009年10月には台風の被害で不通となり、以後 [家城 - 伊勢奥津]間がバス代行となっていしまた。廃止も検討されながら、今年の3月26日にやっと復旧しました。
6年半ぶりに復旧した名松線に乗りに行き、その先の未成区間を自転車で辿るという計画を立てました。松阪まで輪行して、伊勢奥津から走って名張へ。3月と4月は梅と桜で塞がりますから、その後の5月に訪ねることにしました。
名松線の列車本数は少ないです。始発の松阪発が9:38で伊勢奥津着が11:02。これに合わせて近鉄電車で松阪へ。名張から大阪方向の便は多いので帰路の時刻については自由になります。
[松阪駅]
名松線のホーム。単行の気動車がいました。ちびっこい車両ですが、座席がすべて埋まって立つ人が少という程度の乗車。途中でかなり乗降がありましたが、終点まで満席近いぐらい。伊勢奥津で降りた人の多くは観光のようです。
名松線の線路は川に沿って谷間をうねうね登る線形で、カーブがきつくスピードを出せません。一部に勾配区間もありますが、全体に勾配は緩いです。おそらく森林資源の輸送を意識したのでしょうが、近代的な鉄道交通路線ではありません。細いですが平行する道路があり、JR東海がバス転換しようとしたのが判ります。ちなみに、近鉄電車で松阪から名張までは普通でも1時間ほどですから、仮に名松線が全通していても連絡ルートとしては意味が無かったでしょう。
[行き止まり]
伊勢奥津駅。鉄道の線路も路盤もここで終わり。1935年にここまで来た後、延伸の要望はあったらしいですが、具体化はされなかったようです。この先の峠越えはどんなルートを考えていたのでしょうか。築堤で登ってあとは隧道?
[奥津の集落]
駅前から集落の方へ出ました。そこには伊勢本街道奥津宿の表示がありました。現国道は奥津の集落の外を通っています。ここから集落道を西へ進みます。
[集落の道]
国道368号は「酷道」と言われる区間もありますが、このあたりはけっこう綺麗に整備されています。通行する車は多くないけれど面白みの無さそうな道。整備された国道(バイパス道)とからみ合うように続く細い道が集落を貫いています。おそらくこちらが古い街道筋。地図を見ながら細道を進むと、ところどころに「伊勢本街道」の案内標識があります。徒歩で辿る人もいるのでしょうか。
[三多気の桜へ]
桜の並木で有名な三多気の桜。花の時期にはそこそこ人が訪れるらしいですが、伊勢奥津駅から5kmほどあります。ふらりと訪ねるにはハードルが高そうです。
桜の時期では無いですが、あまり来ることの無いエリアですから、偵察の意味でちょっと寄り道します。
[美杉村]
名前のとおり、あたりはきれいな杉山です。三多気の桜へと山を登ると、街道が通っている谷間のあたりが良く見えます。
[奈良県へ]
国道をそれて集落道を通っています。やはりこの道はバイパス道ができる前の国道のようです。
この先、現国道はがっつりと峠を越えます。旧国道らしい道筋もほぼ同じルート。どちらも昔の街道らしくないです。地図には南側から回り込んで敷津の集落を通る道筋が描かれています。こちらへ回ることにしました。
[峠越えの道]
山塊を南から回る道は旧道ではなく林道のような道筋でしたが、鞍部を越えて少しの所で合流して来る道がありました。その分岐には標識がありました。標識の示す方向に少し戻って見ることにしました。
[岩坂峠]
標識に従って進むと公園になっていました。どうやら街道の峠越え区間は車道ではなく徒歩道になっているようです。
[敷津]
峠から少し下って道は山間の平地に出て来ました。のどかな農村風景ですが、緩くうねる細い道に沿って建物が並ぶのは街道集落らしい雰囲気です。
[街道市場みつえ]
そのまま集落内を川筋の方へ下って来ると現国道に出会いました。ここは国道368号と369号の分岐で、道の駅があります。横の駐車場には御杖村のコミュニティバスが停車していました。地域のアクセス拠点の役割もあるのでしょうか。
この先はまだそこそこ距離がありますが、道は下り一方です。あまり嵩張らない程度に山菜と漬け物を買いました。
[奥津からの道]
敷津から下って来た方を振り返って見ています。
築堤で高度を稼いで山腹をへつり登って峠に至るという線形で線路が引けそうに見えます。
[御杖村への道]
ここから国道369号が西へ向かいます。高原状のなだらかな登り道ですが、この先には峠が控えています。御杖村のあたりも訪ねてみると面白そうなのですが、アプローチの交通が難題です。
[現国道]
2車線歩道付きの綺麗な国道は山塊を巻くように緩く下って名張側の谷へ入ります。国道は緩く曲がる流れを渡り越えながら直線的に進む線形(バイパス道)ですが、それと交錯する細い道が集落を通っています。
無愛想なバイパス道は遠慮して、旧道らしい集落道へそれます。
[県境]
やはり集落道は旧国道のようです。センターラインもないひょろい道ですが、少し前まで御杖村の重要なアクセス道路だったことが判ります。
[標識がありました]
地図では普通の白色道になっていますが、国道のおにぎり標識がありました。
[細い!]
道は名張川に沿って谷間を下って行きます。河岸の僅かな平地に農地と集落があり、その脇を道が通っています。一部の区間は対岸に新道が造られていますが、まだ細道のままの区間がかなりあります。
[名張市へ]
余地のあるところはなんとか拡幅したという感じで、微妙に拡がったり狭まったりしながら、白線無しの道が続きます。景色は山間の県道か林道という雰囲気ですが、一応は地域交通の重要路線の国道。路面は悪く無いです。
全体的にはきつい勾配ではありません。線路を引いて列車が登れないことは無いでしょう。しかし狭い谷間ですからやはり建設は難しそうです。
[拡幅区間]
できる所から少しづつ拡幅しているようです。部分的に歩道付き2車線になっています。上書きされている区間もありますが、集落道として細道が残っている所も多いです。拡幅区間も交通は少ないですが、せっかくだからなるべく細道に逸れて走りました。
[ダム湖]
川沿いに下って来ました。そろそろ比奈知ダムの湛水域です。走っている道は集落を抜けてきた細道(そらく旧道)で、対岸から橋で渡り越して来るのが現国道(バイパス道)。そのまま進むと現国道に吸収されます。
ここで橋を渡って対岸へ戻り、ダム湖の左岸の周回道路を走ることにしました。
[湖岸道路]
このダム湖の名前は「ひなち湖」。ここのダムも両岸に道が通っています。右岸は国道でそこそこ自動車が通っていますが、左岸の道は静かです。
[比奈知ダム]
ダムの堰堤を渡って右岸に来ました。
ここから国道は山腹をトラバースしながら下るのですが、名張駅へは少し回り道になります。自転車で走っても面白く無さそうです。そこで脇道でダム下に降りて、川に沿って谷間を辿ることにします。
[名張川]
脇道はダム下の公園に続いていました。そこから川に沿った集落道を走って来ました。谷間が開けてくると、その先には住宅地が見えて来ます。名張はもう大阪への通勤圏です。
[名張駅]
川沿いに行くと景色が急に都会風になり、街並みを少し進むと名張の駅がありました。昨年の春はここから月ヶ瀬の梅を見に行きました。今日はここが終点。
途中で寄り道したり景色に浸ったりしながら、伊勢奥津からここまで4時間弱の旅。あとは自転車を分解して袋詰めして電車乗るだけ。駅前で名物の饅頭を買ってお土産に。
名松線は三重県内を走るローカル線。その名は伊勢路の松阪と伊賀の名張を結ぶ計画から来ているのですが、建設されたのは途中の「伊勢奥津」まで。伊勢奥津と名張の間はバスが結んでいましたが、それも減便されて今は1本だけらしいです。
奈良から伊勢へ向かうルートとして歴史があるのは「伊勢本街道」。桜井から宇陀・曽爾・御杖と山中を抜けて奥津から多気へ至る道筋で、現国道369号から続く368号がほぼこのコースです。集落伝いであまり遠回りでないかわり、山襞を越える峠が連続します。ここに鉄道を通すのは現実的ではありません。途中の奥津付近のほかは街道とは異なるルートで鉄道が計画されました。松阪から川沿いに登って峠を越えて、川沿いに名張へ至り、榛原から桜井へ至る。山地を避けたかわりにずいぶん迂回するルートになりました。その前半部分に相当するのが名松線で、後半部分が近鉄大阪線になりました。近鉄はそのまま東進して青山峠を越えて松阪へ直行するルートを採り、結果として名松線の本来の意義が失われました。
狭い谷間をうねうね辿る線路は何度も水害で不通になっています。2009年10月には台風の被害で不通となり、以後 [家城 - 伊勢奥津]間がバス代行となっていしまた。廃止も検討されながら、今年の3月26日にやっと復旧しました。
6年半ぶりに復旧した名松線に乗りに行き、その先の未成区間を自転車で辿るという計画を立てました。松阪まで輪行して、伊勢奥津から走って名張へ。3月と4月は梅と桜で塞がりますから、その後の5月に訪ねることにしました。
名松線の列車本数は少ないです。始発の松阪発が9:38で伊勢奥津着が11:02。これに合わせて近鉄電車で松阪へ。名張から大阪方向の便は多いので帰路の時刻については自由になります。
[松阪駅]
名松線のホーム。単行の気動車がいました。ちびっこい車両ですが、座席がすべて埋まって立つ人が少という程度の乗車。途中でかなり乗降がありましたが、終点まで満席近いぐらい。伊勢奥津で降りた人の多くは観光のようです。
名松線の線路は川に沿って谷間をうねうね登る線形で、カーブがきつくスピードを出せません。一部に勾配区間もありますが、全体に勾配は緩いです。おそらく森林資源の輸送を意識したのでしょうが、近代的な鉄道交通路線ではありません。細いですが平行する道路があり、JR東海がバス転換しようとしたのが判ります。ちなみに、近鉄電車で松阪から名張までは普通でも1時間ほどですから、仮に名松線が全通していても連絡ルートとしては意味が無かったでしょう。
[行き止まり]
伊勢奥津駅。鉄道の線路も路盤もここで終わり。1935年にここまで来た後、延伸の要望はあったらしいですが、具体化はされなかったようです。この先の峠越えはどんなルートを考えていたのでしょうか。築堤で登ってあとは隧道?
[奥津の集落]
駅前から集落の方へ出ました。そこには伊勢本街道奥津宿の表示がありました。現国道は奥津の集落の外を通っています。ここから集落道を西へ進みます。
[集落の道]
国道368号は「酷道」と言われる区間もありますが、このあたりはけっこう綺麗に整備されています。通行する車は多くないけれど面白みの無さそうな道。整備された国道(バイパス道)とからみ合うように続く細い道が集落を貫いています。おそらくこちらが古い街道筋。地図を見ながら細道を進むと、ところどころに「伊勢本街道」の案内標識があります。徒歩で辿る人もいるのでしょうか。
[三多気の桜へ]
桜の並木で有名な三多気の桜。花の時期にはそこそこ人が訪れるらしいですが、伊勢奥津駅から5kmほどあります。ふらりと訪ねるにはハードルが高そうです。
桜の時期では無いですが、あまり来ることの無いエリアですから、偵察の意味でちょっと寄り道します。
[美杉村]
名前のとおり、あたりはきれいな杉山です。三多気の桜へと山を登ると、街道が通っている谷間のあたりが良く見えます。
[奈良県へ]
国道をそれて集落道を通っています。やはりこの道はバイパス道ができる前の国道のようです。
この先、現国道はがっつりと峠を越えます。旧国道らしい道筋もほぼ同じルート。どちらも昔の街道らしくないです。地図には南側から回り込んで敷津の集落を通る道筋が描かれています。こちらへ回ることにしました。
[峠越えの道]
山塊を南から回る道は旧道ではなく林道のような道筋でしたが、鞍部を越えて少しの所で合流して来る道がありました。その分岐には標識がありました。標識の示す方向に少し戻って見ることにしました。
[岩坂峠]
標識に従って進むと公園になっていました。どうやら街道の峠越え区間は車道ではなく徒歩道になっているようです。
[敷津]
峠から少し下って道は山間の平地に出て来ました。のどかな農村風景ですが、緩くうねる細い道に沿って建物が並ぶのは街道集落らしい雰囲気です。
[街道市場みつえ]
そのまま集落内を川筋の方へ下って来ると現国道に出会いました。ここは国道368号と369号の分岐で、道の駅があります。横の駐車場には御杖村のコミュニティバスが停車していました。地域のアクセス拠点の役割もあるのでしょうか。
この先はまだそこそこ距離がありますが、道は下り一方です。あまり嵩張らない程度に山菜と漬け物を買いました。
[奥津からの道]
敷津から下って来た方を振り返って見ています。
築堤で高度を稼いで山腹をへつり登って峠に至るという線形で線路が引けそうに見えます。
[御杖村への道]
ここから国道369号が西へ向かいます。高原状のなだらかな登り道ですが、この先には峠が控えています。御杖村のあたりも訪ねてみると面白そうなのですが、アプローチの交通が難題です。
[現国道]
2車線歩道付きの綺麗な国道は山塊を巻くように緩く下って名張側の谷へ入ります。国道は緩く曲がる流れを渡り越えながら直線的に進む線形(バイパス道)ですが、それと交錯する細い道が集落を通っています。
無愛想なバイパス道は遠慮して、旧道らしい集落道へそれます。
[県境]
やはり集落道は旧国道のようです。センターラインもないひょろい道ですが、少し前まで御杖村の重要なアクセス道路だったことが判ります。
[標識がありました]
地図では普通の白色道になっていますが、国道のおにぎり標識がありました。
[細い!]
道は名張川に沿って谷間を下って行きます。河岸の僅かな平地に農地と集落があり、その脇を道が通っています。一部の区間は対岸に新道が造られていますが、まだ細道のままの区間がかなりあります。
[名張市へ]
余地のあるところはなんとか拡幅したという感じで、微妙に拡がったり狭まったりしながら、白線無しの道が続きます。景色は山間の県道か林道という雰囲気ですが、一応は地域交通の重要路線の国道。路面は悪く無いです。
全体的にはきつい勾配ではありません。線路を引いて列車が登れないことは無いでしょう。しかし狭い谷間ですからやはり建設は難しそうです。
[拡幅区間]
できる所から少しづつ拡幅しているようです。部分的に歩道付き2車線になっています。上書きされている区間もありますが、集落道として細道が残っている所も多いです。拡幅区間も交通は少ないですが、せっかくだからなるべく細道に逸れて走りました。
[ダム湖]
川沿いに下って来ました。そろそろ比奈知ダムの湛水域です。走っている道は集落を抜けてきた細道(そらく旧道)で、対岸から橋で渡り越して来るのが現国道(バイパス道)。そのまま進むと現国道に吸収されます。
ここで橋を渡って対岸へ戻り、ダム湖の左岸の周回道路を走ることにしました。
[湖岸道路]
このダム湖の名前は「ひなち湖」。ここのダムも両岸に道が通っています。右岸は国道でそこそこ自動車が通っていますが、左岸の道は静かです。
[比奈知ダム]
ダムの堰堤を渡って右岸に来ました。
ここから国道は山腹をトラバースしながら下るのですが、名張駅へは少し回り道になります。自転車で走っても面白く無さそうです。そこで脇道でダム下に降りて、川に沿って谷間を辿ることにします。
[名張川]
脇道はダム下の公園に続いていました。そこから川に沿った集落道を走って来ました。谷間が開けてくると、その先には住宅地が見えて来ます。名張はもう大阪への通勤圏です。
[名張駅]
川沿いに行くと景色が急に都会風になり、街並みを少し進むと名張の駅がありました。昨年の春はここから月ヶ瀬の梅を見に行きました。今日はここが終点。
途中で寄り道したり景色に浸ったりしながら、伊勢奥津からここまで4時間弱の旅。あとは自転車を分解して袋詰めして電車乗るだけ。駅前で名物の饅頭を買ってお土産に。